塗装工事の「ダメ込み」の種類とポイント

塗装工事の「ダメ込み」の種類とポイント

ダメ込み

ダメ込みとは

ダメ込みとは、外壁や屋根を塗装をする時に、細かいところを刷毛で塗ることを指す塗装の専門用語です。

ダメ込みをする部分以外の広いところは主にローラーで塗ります。

「ダメ込み」の意味は、【ダメが出ないように塗り込める】から来ています。

また、ダメとは「ダメ出し」など「仕事のやり直し」を指します。

 

塗装の場合の「ダメ」は

  • 塗り残し
  • 塗装が透けている
  • ペンキが垂れている
  • はみ出している

・・・等があります。そんな「ダメ」の出やすい部分をきちんと塗るように心掛ける意味が「込められている」かもしれません。

→【参考コラム:外壁塗装の「ダメ」と「ダメ直し」】

「ダメ込み」のパターン

実際の現場では「ダメ込み」を指す作業には大きく分けて以下の4パターンがあります。

では、それぞれの場面を解説してみましょう。

 

1. ローラーで塗る前に細かいところを先に塗る「ダメ込み」

外壁や屋根など広い場所を塗る場合は、細かいところを刷毛で塗っておき、後で残った広い面をローラーで塗ります

刷毛もローラーも素早く塗れるので、作業を分担すると作業効率が上がります

一般的に「ダメ込み」という場合こちらの意味で使う事が多いです。

「先にダメ込み」をする場合は、例えば下記のような場所になります。

 

サッシ廻りのテープとの境目

サッシ廻りのテープとの境目のダメ込みを行う塗装職人

 

外壁の入り隅

外壁の入り隅を刷毛でダメ込みしている

 

細かい部分の塗装

細かい部分の塗装

 

2. ローラーで塗る前に凹みを先に塗る「ダメ込み」

ヘーベルハウスなどのALC外壁やサイディングの中には、目地や溝などの凹んでいる部分が1㎝以上ある外壁もあります。

そんな目地部分にはローラーでは塗料が塗れませんので、刷毛で目地の奥を塗ることになります。

そういったローラーで塗れない外壁の目地や溝をあらかじめ刷毛で塗っておく事も「ダメ込み」と呼びます。

 

ALC・ヘーベル外壁の目地や凹んだ部分のダメ込み

ALC・ヘーベル外壁の目地や凹んだ部分

大きな溝があるサイディング外壁

大きな溝があるサイディング外壁
大きな溝があるサイディング外壁もあらかじめダメ込みをしてから平面をローラーで塗装します。
凹みの量など現場状況に合わせて、刷毛とローラーを両方持って一緒に塗る場合と2人で作業を分担する場合とがあります。

 

ダメ込み不要な目地

ダメ込み不用の外壁
また、下記のようなサイディングのタイル調目地の場合などは、目地の凹みが5㎜以下なのでローラーだけで塗装が出来ます。
この程度のサイディングの目地の凹みは、ダメ込みは不用でローラーだけで塗れるので、ダメ込みは特に必要ありません。

 

3. 色分け部分の2回の「ダメ込み」

建物を塗装する際には各素材の境界になる部分が出てきます。

窓のサッシと外壁などの境界はマスキングして塗らない事で終わりますが、塗装と塗装で境界を分ける時には、先に片側を「ダメ込み」して塗り込んでおき、後でもう一方をダメ込みします

 

例えば塗装と塗装の境界のでよくあるのは軒裏と外壁の取り合いです。

外壁と軒裏は、色と素材が同じ場合と違う場合があり、色と素材が違う場合は、例えば下記のようになります。

軒裏のダメ込み

軒裏のダメ込み
まず軒裏部分から外壁に被せるように塗ります。
(外壁は中塗りまで塗ってあります)

マスキング

軒裏にマスキングテープを貼る塗装職人
軒裏が乾いたら、マスキングテープを貼って外壁のダメ込みを行います

 

フリーハンドのダメ込み

フリーハンドで軒裏のダメ込みする塗装職人
軒裏の素材がテープの貼れない凸凹のある吹き付け仕上げの場合は、外壁のダメ込みを先にして後でフリーハンドで軒裏のダメ込みを行います。

 

4. タイルなど見切りの「ダメ込み」

最近の住宅にはアクセントでタイルが貼られている事が多くなってきました。

タイルはサッシ同様塗装をしないので、除けて塗らなければなりません。

ただサッシと違うのは大抵のタイルはツルツルしたタイルでなないので、ガムテープで上手く養生が出来ない事です。

さらに艶の無い素焼きのようなゴツゴツしたタイルが多いので、そんなタイルに塗料が付くと落とす事が出来ません

 

そんなタイルとの境界部分を綺麗に塗る時の「ダメ込み」の手順は下記のように行います。

  1. タイルに付かないようにガイドとしてガムテープでタイルを養生します
  2. 硬い豚毛の平たい刷毛で外壁の凹凸の中に塗料が入っていくように塗ります。
    ガムテープに付かないように塗らないとタイルとの隙間かあ塗料が入り込んでしまいます。
  3. ダメ込みが済んだらローラーで塗っていきます

タイル見切りのダメ込み

タイルに付かないように細い刷毛で塗装
タイルに付かないように細い刷毛でダメ込みます。
ガイドとしてガムテープでタイルを養生しています。

刷毛選択と塗料の相性もポイント

見切りの線を出す
外壁は平らでは無く、ゴツゴツ凹凸があるので、見切りの線を出すのにはテクニックが必要です。
硬い豚毛の刷毛で塗らないと凹んだ部分に入っていきません。

ダメ込みが終わったら一気にローラーで塗る!

ダメ込み後はローラーで塗る
壁のタイルのダメ込み後はローラーで塗っていきます

 

5. 戸建て外壁塗装の「ダメ込み」

実際は戸建ての外壁塗装では、ダメ込みとローラーは同時に塗っていくことがほとんどです。

その理由は、ダメ込みの場所=刷毛を使って塗る細かい部分の塗装が多いからです。

 

刷毛で雨樋の奥をダメ込み・・・

刷毛で雨樋の奥をダメ込み

ローラーで広いところを同時に塗ります

ローラーで広いところを塗る

仕上がり後

仕上がり

右手にローラー・左手には刷毛を持っての作業

住宅の塗装では刷毛とローラーを同時に塗る
戸建て住宅の塗装では、見切り部分の「ダメ込み」も含めて同時に塗っていくことの方が多い

 

6. ダメ込みとローラーを分担する場合

外壁塗装をする時には先に「ダメ込み」を先にしておき、後で「ローラー」で広いところを塗って行く場合があります。

 

刷毛もローラーも持ってダメ込みながらローラーで塗って仕上げていくのが好きな職人チームもいますし、ダメ込みとローラーを分けて塗り進めるのが好きな職人チームもいるので、どの方式で塗って行くかは明確な決まりはありません。

 

ただ、大雑把に言うと、マンションや工場などの広い壁が多い場合は、ローラーで単純に塗る作業が多くなり作業を分担した方が効率が良くなります

逆に戸建て住宅のように刷毛で塗る作業が多ければ、ローラーで塗る作業量は少しなので、わざわざ分担するメリットが無くなります。

 

塗装の工程や作業の手順は親方職人次第で正解がありません。

「仕事は見て盗むもの」という昔ながらの考えが変わってきたので、今後は多少マニュアル化が進むかもしれません。

 

7. まとめ

一般にローラーは簡単で、刷毛の方が難しいものです。

ダメ込みの技術が上がれば、現場での動き方や仕事の速さも上がってきます。

 

外壁塗装工事は特に「匠の技」を必要とする訳では無いですが、どんなパターンの下地にどんな道具を使ってどのように塗るか?という選択を適切に選べるかが工事を早く・上手に進めるポイントになってきます。

 

ですから、今回挙げた5つのダメ込みのパターンを正しく選んで工事を進める事が出来ないと、結局のところ工事進行が遅くなり手抜きをせざるを得なくなります。

 

「早くて上手い工事」が出来れば、おのずと経費が減りますから、お客様に還元できます。

それには、住宅専門に工事を行っている職人の方が長けていて当然です。

 

業者選びに専門店を選ぶメリットとしては分かりにくいかも知れませんが、なかなかこういった記事も無いので書いてみました。

ご参考になりましたでしょうか?

投稿者プロフィール

高橋 良一
花まるリフォーム代表。高橋塗装店の息子として世田谷で生まれ育ち22歳で職人デビュー38歳で花まるリフォームとして独立しました。戸建住宅の「外壁塗装」に関わることなら誰よりも知識と経験が有る、そんなイケナイ自負(苦笑)があります。仕事以外ではアニメとかマンガが好きな第一次オタク世代です。

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