2液型塗料のメリット・デメリット
二液型塗料とは?
二液型塗料とは、塗料を塗る時に(直前に)A液とB液を指定の割合で混ぜて塗る塗料の事です。
一般的な塗料は一液型なので、少し特殊な部類に入るかもしれません。
二液型塗料は一般住宅の塗替えで使う塗料の中では、外壁に塗る塗料や、鉄部その他に塗る油性系(弱溶剤)で使われています。
水性塗料にはごく一部にしか採用されていません。
2液型塗料は【主材】と【硬化剤】を塗る前に混ぜる
2液型 外壁用ウレタン塗料 クリーンマイルドウレタン 主材13.5㎏:硬化剤1.5㎏ |
2液型 屋根用ウレタン塗料 ヤネフレッシュ 主材14㎏:硬化剤2㎏ |
2液型 多目的溶剤シーラー マイルドシーラーEPO 主材10.5㎏:硬化剤3.5㎏ |
各種二液型塗料。 缶の形や容量もバリエーションが豊富 |
世の中にある塗料は、元々1液型でした。
それをわざわざ2つに分け、使う前に混ぜなければならない塗料を作る理由は、性能の向上しかありません。
私の記憶では、1980年代後半に日本ペイントのファインウレタンU-100が超高級塗料として使われ始めた記憶があります。
当時は「硬化剤」と言えば防水材でしか使われていませんでしたので、物凄く早く乾いてしまうのでは?と怖がりながら使ってみたものの、適度な乾燥時間と塗り易さ、そして仕上がりの美しさに感動したのを覚えています。
ただ、当時はそれだけ高価な塗料でしたし慎重に主材と硬化剤を混ぜて使うのも当然のように思っていましたが・・・
その後、爆発的ヒットとなって市場に普及し始めると、思わぬ事が起き始めてきたのです。
2液型塗料の問題点
2液型塗料の問題点① きちんと分量を計らない職人が多い!
2液型塗料は2種類の塗料を塗る前に混ぜてから塗ります。
おおむね【主材】の方が分量が多く一斗缶に入っています。
小さい缶に入っているのは【硬化剤です】
このように2つの缶から適切な分量を使う為には、いちいち重さを量ってらなければなりません。
そのため、二液型塗料には「ある問題」があります・・・
つまり、「手抜き」あるいは「不精な」職人の場合、主材(塗料液)だけで塗ってしまい、硬化剤を入れない(混ぜない)職人がいるのです。
(又はだいたいの目分量で硬化剤を入れる)
適切な重量比で混ざっていない塗料は「正しい用量・用法を守って使用している」とは言えません。
当然、性能や寿命の低下に繋がります。
エスケー化研のクリーンマイルドシリース゛の硬化剤の上部に印刷された注意書き。
きちんと計量して混ぜる職人がいない事が多いので、丁寧に混合比も書いあります。
2液型塗料の問題点③ 硬化剤の種類がまちまち
14:2の比率ならまだ簡単です。
半分なら7kg:1㎏、4分の1なら3.5㎏:0.5㎏とまだ割り切りやすいです。
しかし、9:1の塗料の場合だと簡単ではありません。
一斗缶で13.5:1.5ですから、半分なら6.75kg:.075㎏・4分の1なら3.38㎏:0.38㎏と・・・
少量使う場合の重量計算が面倒なのです。
2液型塗料の問題点② 硬化剤の種類がまちまち
各種二液型塗料の硬化剤。
缶の形や容量もバリエーションが多い。
2液型塗料の1液タイプが登場!?
2液塗料なのに適切に混合しない不具合が多発したからなのか、「いちいち混ぜてられないヨ」という職人市場からの要望に応えてなのか?・・・しばらくするとファインウレタンに1液タイプが登場しました。
メーカーの話では「主剤と硬化剤が缶の中で混ざらないように入っていて、塗る時に混ざるようになっている・・・?」との事です。
2液タイプと同等の性能で、わざわざ混ぜなくて良くなったのであれば素晴らしい話ですが、残念ながらそうではありません。
確かに従来の1液型合成樹脂アクリル塗料(いわゆる油性ペンキ)よりはマシなのですが、使い勝手が良くなっった一方で、性能は半減、といったところです。
こちらが1液ファインウレタンU-100
改良されて、発売当初と比較すると性能は向上しているようですが、まだまだ2液型が廃止されるには至っていません。 現状は、会社や職人の姿勢で2液タイプを使うか1液を使うかに分かれているようです。 |
2液型塗料と1液型塗料とではここが違う!
では、2液型塗料のメリットから整理してみましょう。
塗料の寿命(耐候性・耐久性)が長い!
寿命は2液型塗料の方が1.3倍程度長持ちする感覚です。
正直、1液型の塗料は半分くらいの寿命しか無いのでは?とも思っています。
ですから、花まるリフォームでは怖くて外壁に塗った事は1度もありません。
密着力が強い! 手に付いたら落ちない・・・
とにかく2液型の塗料は塗った後で手に付いたら取れません!
憎らしい程取れません(苦笑)
職人から絶大な信頼があるのは、この憎さが1つの要因です。
手に付いた塗料が簡単に落ちないという事は、塗料の密着力がとても強力な証明になるからです。
密着力が強い! 色々なものに塗れるようになった!
これはとても重要です。
密着力が強くなったおかげで、今までは塗っても剥がれてしまった部分が、剥がれずに密着してくれるようになったのです。
例えば一番困っていたのが雨どいです。
塩ビ製の雨樋は、2液型塗料が出るまでは塗っても剥がれてしまう事が多く、私たち職人にとっては悩みの種でした。
ところが2液型塗料を塗ってからは、全く剥がれなくなったのです!
他にも鋳物門扉・アルミ・ステンレスなど、それまでは「塗れるけれども後で剥がれてしまうところ」にも「塗った後で剥がれないように塗れる」ようになったのです。
密着力が強い! 下塗りが不要な場合も!
2液型塗料は、それ自体に密着力が強いのでシーラーや錆止めなどの下塗り塗料が要らない場合が有ります。
通常は下塗りを塗らないと手抜きになってしまいますが、この場合はそうではありません。
例えば、上記の塩ビ製雨どいや、状態が良く錆ていない鉄板・傷んでいないスレート屋根等も下塗りが不要な場合が有ります。
ただし、注意が必要な事も!
それは、下塗りが必要か?不要か?を見極める職人の判断能力です。
判断を間違えてしまえば元も子も有りません。
艶がしっとりして綺麗 ※一部メーカーを除く
2液型塗料を塗った後の表面は、おおむねしっとりし落ち着いていて品の有る艶があります。
艶が有ってもギラギラした感じがしないので、高級感も出ます。
それに対して1液型塗料は、塗膜が厚めでお値段なりの質感です。
塗膜が硬い
塗膜の厚みにも影響があるのですが、2液型塗料は触った感じがカチカチして硬い塗膜を作ります。
硬さが何に影響するかと言うと、擦った時の傷の付き方です。
1液型塗料は、厚みがあり柔らかい塗膜です。
服や布で表面を擦ると表面に傷が付きやすく、その部分の艶が鈍くなります。
2液型塗料は、薄くて硬い塗膜です。
少々擦っても傷が付かないので、擦った後でも艶は特に変わりません。
つまり、艶が長持ち=塗装が長持ち、という訳です。
刷毛目が出ない
刷毛目(はけめ)とは、刷毛で塗った後の筋の事。
安い塗料ほど、塗った後で刷毛目の筋の凹凸が残ります。
(逆に漆などのデリケートで高級な「塗り物」でもその傾向が強くなります)
2液型塗料は強制的に固まる(乾く)特徴があります。
そのため塗料の表面側から乾いて行く訳では無く、表面も内側も同時に固まって行きます。
その時に表面側の凹凸が伸ばされて平らになるので、刷毛目が出ない平らな塗膜が出来ます。
特に下地に凹凸が無い平らなボードや勝手口の扉の表面などを塗ると良く分かります。
塗りやすい
何となく1液型塗料の方が塗りやすいような気がしますが、逆です。
1液型塗料は塗ると直ぐに表面の硬化が始まるので、塗り重ねようとする部分の表面だけが半乾きになって引っ掛かるきます。
固まり方がイイ感じ!
2液型塗料は強制的に固まる特徴があるので、乾きが早くその凹凸が出る傾向に有るように思え
塗料が固まるまでの時間がシビアになる事にも繋がりますが、おおむね12時間後には見事にゼリー状になってしまいます。
塗料の価格
塗料の仕入れ価格は、2液型塗料の方が1割程度高い感じです。
その程度の塗料の価格差であれば、その他の要素の違いを気にした方が良い程度です。
確実に化学反応を起こす事が出来る!
設計思想通りに、きちんと2つの液を分けて、塗る直前に化学反応を起こさせる事で、確実に塗料の化学反応を起こさせることが出来ます。
2液型塗料のデメリット
では、2液型塗料にデメリットが無いのか?と言えば、デメリットが無い訳ではありませんが、念のため、デメリットも挙げてみましょう。
面倒くさい(主材と硬化剤をキチンと量って混ぜなければいけない)
- 主材と硬化剤をきちんと量らない職人がいる
- 硬化剤を入れない職人がいる
主材と硬化剤を混ぜたら翌日には使えなくなる(固まっててしまう)
2液型塗料は、2つの塗料を混ぜると強制的に固まり始めます。
固まるまでの時間はちゃんとした液状ですが、一定の時間を過ぎると急激に固まるのです。
つまり、時間が経つと自動的に固まってしまいます。
必要以上に塗料を混ぜてしまうと、当然残った塗料は廃棄するしかありません。
ですから、2液型塗料は混ぜる量=塗る面の面積をあらかじめ見定める必要が有ります。
それが分からなかったり、面倒な職人はこのんで1液型塗料を使います。
刷毛やローラーが使い捨てになる
1液型塗料の場合、塗り終わったら刷毛をシンナーか水で洗えばその後で何回でも使えます。
ただ2液型塗料の場合は、刷毛の中に残った塗料が時間と共に固まってしまいます。
余程しっかり洗わないと次回また使う事が出来ません。
まとめ
いかがでしょうか?
まとめると、1液型塗料を使っている職人は「面倒くさがりの手抜き職人」と言えます。
通り掛かりの塗装現場で1液ファインウレタンを使っているのを見かけると、正直ガッカリします…。
主材・硬化剤を量る手を抜かないで、真面目に良い材料を使って欲しいものです。
外壁塗装の見積りを比較するなら、細部塗装の塗料が1液型か2液型かで判断するのも良い方法かもしれません。
投稿者プロフィール
- 花まるリフォーム代表。高橋塗装店の息子として世田谷で生まれ育ち22歳で職人デビュー38歳で花まるリフォームとして独立しました。戸建住宅の「外壁塗装」に関わることなら誰よりも知識と経験が有る、そんなイケナイ自負(苦笑)があります。仕事以外ではアニメとかマンガが好きな第一次オタク世代です。
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