単管抱き足場の特徴と、メリット・デメリット

単管抱き足場の特徴と、メリット・デメリット

単管抱き足場とは、建築用の仮設足場の種類で、主に2階建てなどの低層の外壁塗装用の足場として使われています。

安全性や価格面で次第にクサビ式足場が主流になってきた昨今ですが、まだまだ単管足場で外壁塗装をしている現場も目にします。

そこで今回は、外壁塗装で必ず必要になる足場のうち、単管抱き足場についてまとめてみたいと思います。

1. 単管抱き足場とは

単管抱き足場の特徴と、メリット・デメリット

単管抱き足場」と言うのは、「単管」パイプを建てた柱と、両側に「抱き」合わせtたパイプとで作る「足場」です。

柱材と足場材に同じ材料を使うところと、抱き合わせて足場を組むところは、丸太足場とほとんど同じです。

単純に言って丸太足場の進化形と言って良いと思います。

 

丸太足場を「丸太抱き足場」とは言わないのは、単管を使う足場には他にブラケット足場があり、それと区別するためでしょう。
(ちなみに私のまわりでは、単管炊き足場のことは通常「単管足場」と呼び、単管ブラケット足場の方は「ブラケット足場」と呼んでいました。)

2. 単管抱き足場の歴史と外壁塗装

単管抱き足場は、2本のパイプの上に足を乗せる。

単管抱き足場は、2本のパイプの上に足を乗せる。

 

1970年代までは戸建住宅の足場工事と言えば新築がメインで、丸太足場をとび職が掛けていました

しかし1980年代に入ると住宅の塗り替え工事が増え出します。それまでと違い、外壁塗装工事単体で足場を掛けることが増えたのですが、とび職に頼むとなかなか足場を掛けてもらえなかったり、塗装だけの工事なのに塗装に適した高さに足場を組んでもらえませんでした。

そこで、とび職に足場を掛けてもらわずに単管足場を自分で買い、自分たちで足場を組む塗装職人が出始めます(私もその一人でした)。

単管抱き足場は組立が比較的容易で丸太より揺れが少なかったため、とび職の掛ける丸太足場より安心だったのです。

 

そのため、住宅の塗替え工事では鳶職が丸太足場で組む時代が終わり、1980年代?2010年代頃までは塗装職人が単管抱き足場で組むことが多くなりました

しかし執筆時の2017年現在では単管抱き足場は徐々に少なくなっています。
それは、さらに新型の安全な足場が出たからです。1972年の労働安全法労働安全衛生規則)の施行で建築足場にも安全基準が定められました。

単管抱き足場の場合は、床板が無くパイプの上が作業場なので、安全性に欠けることから安全基準を満たせなくなってしまいました。

 

そこで1980年代にきちんと作業用の床がある「クサビ式足場」が開発され、次第に普及し2010年代から多くの外壁塗装工事で採用されるようになっています。

クサビ式足場には作業用の床がある

クサビ式足場には作業用の床があるのが特徴

 

3. 単管炊き足場のメリット・デメリット

 

外壁塗装の足場としての単管足場が減ったとは言え、まだ単管を使った足場が無くなった訳ではありません。

単管を使った足場は自由度が高くクサビ式足場では対応出来ない場所も多々あります。
特に狭い場所や少しの足場では単管足場の方が重宝することが多く、まさに「適材適所」となっています。

単管足場のメリットはパイプとパイプを自由に繋ぐこと

単管足場のメリットはパイプとパイプを自由に繋ぐことが出来る点です。
これにより縦にも横にも一直線に繋ぐことが出来るようになりました。

丸太足場からパイプ足場(単管炊き足場)になった時に一番嬉しかったのはこの「段差」がなくなったことです。

 

またクサビ式足場と比較すすると、軽い柱の位置や足を乗せる足場の高さを自由に設計できる点と、パイプを自由な長さに切断して継ぎ足せる点です。

デメリットは、足場がパイプで滑りやすいこと・・・安全面ですね。また、新品だったり塗れていたりすると、とても滑ります。

 

4. 単管抱き足場の組み立て方

 

丸太足場は番線という太い針金で柱と足場を縛っていきますが、単管足場ではパイプを固定するには専用の金物(クランプ)を使います。

また、丸太足場と違い足場を繋ぎたい時には「ジョイント金物」をパイプの両端に差し込んで締め付ければ段差無く一直線に繋いでいくことが出来ます。

単管抱き足場の組み立て方  

単管足場はクランプを使ってパイプを組み立てていく。
ジョイントで繋げば、長い直線も一本で作ることが出来ます。

 

5. 足場の道具

単管

単管

単管足場のメイン材のパイプ。直径(外径)は48.6mmの鉄製パイプ。

厚みは各種あります。
ホームセンターなどで売られている軽いものは1.8㎜、従来のものは2.4㎜、その他2.2㎜の各種です。

 

3連直交クランプ

3連直交クランプ

主に柱パイプに足場パイプ2本を抱き合わせる形で固定するのに使うのが3連クランプです。

2つのパイプは直角に固定出来るようになっていて、もう1つのパイプは自由な角度で固定出来るようになっています。

 

3連自在クランプ

3連クランプで、どのパイプも固定せず自由な角度で固定出来るようになっています。

2連直交クランプ

3連自在クランプ単管パイプ2本を直角に固定するのに使います。

2連自在クランプ

単管パイプ2本を自由な角度で固定するのに使うことが出来ます。

ジョイント

単管パイプを延長するのに使います。
※単管足場のジョイントに「ボンジョイント」を使うと労働安全衛生法違反になります

ボンジョイントとは?
単管足場用の継手金具として使用される部材です。本体のカラーに取り付けられているねじを回すに従い、ほぞ部が広がり、単管の内側にほぞ部が圧着することにより抜け止め機能が働く構造のものです。抜け止め機構が圧着方式であり、その他の抜け止め機能がないことから、引張強度が極めて低く、「鋼管足場用の部材及び附属金具の規格」(労働省告示第103号)を具備していません。

厚生労働省:単管足場に「ボンジョイント」を使用しないで下さい!!(下記写真も厚生労働省ホームページより転載)

ボンジョイントボンジョイント

ボンジョイントが片側だけ刺さった単管パイプボンジョイントが片側だけ刺さった単管パイプ

ボンジョイントで単管パイプを繋いだところボンジョイントで単管パイプを繋いだところ

ベース

足場の柱が埋まっていかないように支える土台です。

ラチェット

クランプのナットを締める道具。

ラチェットは両端に違うサイズのナットが入るようになっているので、17㎜と21㎜のナットが入る17×21という規格のラチェットを使います。

電動インパクトドライバー

インパクトドライバーでクランプを締める

ラチェットを手で回さずに、バッテリー駆動のインパクトドライバーなどでナットを締める場合に使います。
楽だし、なんかカッコイイ感じで職人には人気が高いのだと思います。

確かに作業時間が短縮出来て良い反面、音がうるさく近隣に迷惑な場合も多い

また、丁度良い加減でナットを緩めないとナットが外れてしまうことが多く、ナットを無くしてしまうとクランプが使えなくなってしまいます。

ちなみにナットのサイズは、インチねじ(ウイットねじ)の7/16サイズ(W三分五厘)のサイズです。

 

6. 足場の価格

 

最後になりましたが、気になる足場の価格のお話です。

単管抱き足場の単価は、1平米当たり700円~800円前後がボリュームゾーンでしょう。

これに「メッシュシート」が1平米100円~200円程度加算されますから、両方まとめてある見積りだと800円~1,000円程度になります。

 

気を付けたいのが、足場の価格は安い方が印象が良いので塗装の価格に含ませてしまう業者がいることです。
足場代無料!」と言うのはこの種類の見積りマジックですね(笑)

単管抱き足場作業中

また、数量が少なくてお得な足場の場合は、足場を必要以上に省いて工事をされてしまう危険もあります。

出来れば足場を組んだ状態の施工事例をいくつか見せてもらうと良いでしょう。ホームページを持っている業者なら必ず確認しましょう。

 

「たかが足場、されど足場」、足場次第で工事のクオリティーがガクッと落ちる場合もあります

足場が安いからといって、工事全体の品質が悪くなってしまうと、安物買いの銭失いになってしまいますのでご注意ください。

 

相見積りの価格・数量がバラバラだったらどうしたら良いの?

相見積もりをするとよくある話ですが、数量が各社バラバラでどう判断したら良いのか分からなくなる、という事があります。

そんな時は、まず見積もりをよく見てみましょう。

 

見積り項目に足場の種類の記載がきちんとがあるものと、記載が無いものがあると思います。
クサビ式足場でも単管抱き足場でも結果的には価格は変わりませんが、見積り項目が細かければ見積りの信頼性は上がり、大雑把な方は信頼性が下がります。

一式工事が良くないのと同じ理由です。

 

また、見積りが細かければ、工事自体も細かく面倒を見る傾向は確かなようです。

次に、足場の面積の計算式を教えてもらいましょう。教えられない等と拒否されたらその会社には頼めませんね。

 

他の見積り項目の数量は色々とごまかしが効きますが、足場は家の外周面積だけです。ごまかす事は出来ません。

ご自宅の図面があれば、その数量と照らし合わせておかしな計算や面積になっていないかは確認した方が良いでしょう。

 

7. まとめ

単管抱き足場

いかがでしたでしょうか。今回は単管抱き足場について、歴史や種類、長所短所・価格についてまで、色々とまとめてみました。

まだしばらくは、単管抱き足場で工事を行う場合も出ると思いますので、見積りに「単管抱き足場」と記載があったらこのコラムを思い出して見に来て頂ければ嬉しいです。

投稿者プロフィール

高橋 良一
花まるリフォーム代表。高橋塗装店の息子として世田谷で生まれ育ち22歳で職人デビュー38歳で花まるリフォームとして独立しました。戸建住宅の「外壁塗装」に関わることなら誰よりも知識と経験が有る、そんなイケナイ自負(苦笑)があります。仕事以外ではアニメとかマンガが好きな第一次オタク世代です。

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